① 特に定めのない限り,着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定する。
算定可能な場合の算定基準
- イ 金銭債権 債権総額(利息及び遅延損害金を含む)
- ロ 将来の債権 債権総額から中間利息を控除した額
- ハ 継続的給付債権 債権総額の10分の7の額。ただし,期間不定のものは,7年分の額
- ニ 賃料増減額請求事件 増減額分の7年分の額
- ホ 所有権 対象たる物の時価相当額
- へ 占有権,地上権,永小作権,賃貸権及び使用借権 対象たる物の時価の2分の1の額。ただし,権利の時価がその時価を超えるときは,権利の時価相当額
- ト 建物についての所有権に関する事件 建物の時価相当額に敷地の時価の3分の1の額を加算した額
建物についての占有権・賃借権及び使用借権に関する事件 へにその敷地の時価の3分の1の額を加算した額 - チ 地役権 承役地の時価の2分の1の額
- リ 担保権 被担保債権額。ただし,担保物の時価が債権額に達しないときは,担保物の時価相当額
- ヌ 不動産についての所有権,地上権,永小作権,地役権,賃借権及び担保権等の登記手続請求事件 ホ,ヘ,チ及びリに準じた額
- ル 詐害行為取消請求事件 取消請求債権額。ただし,取り消される法律行為の目的の価額が債権額に達しないときは,法律行為の目的の価額
- オ 共有物分割請求事件 対象となる特分の時価の3分の1の額。ただし,分割の対象となる財産の範囲又は特分に争いがある部分については,対象となる財産の範囲又は特分の額
- ワ 遺産分割請求事件 対象となる相続分の時価相当額。ただし,分割に対象となる財産の範囲又は相続分についての争いのない部分については,相続分の時価の3分の1の額
- カ 遺留分減殺請求事件 対象となる遺留分の時価相当額
- ヨ 金銭債権についての民亊執行事件 請求債権額。ただし,執行対象物件の時価相当額(担保権設定,仮差押等の負担があるときは,その負担を斟酌した時価相当額)
算定不能な場合の算定基準800万円とする。ただし,事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して増減額することができる。
経済的利益の額と紛争の実態又は依頼者の受ける額とに齟齬があるときは増減額しなければならない。
② 境界に関する事件とは,境界確定訴訟,境界確定を含む所有権に関する訴訟その他をいう。
調停及び示談交渉の場合は,7の額又は1の額を,それぞれ3分の2に減額することができる。
示談交渉から調停,示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は,7の額又は1の額の,それぞれ2分の1
③ 調停事件は8に準ずる。ただし,それぞれの額を3分の2に減額することができる。
示談交渉から調停,示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は,8の着手金の額の2分の1
④ 事案簡明な事件とは,特段の事件の複雑さ,困難さ又は頻雑さが予想されず,委任事務処理に特段の労力又は時間を要しないと見込まれる事件であって,起訴前については事実関係に争いがない情状事件,起訴後については公開法定数が2ないし3回程度と見込まれる情状事件(上告事件を除く)をいう。
同一弁護士が起訴前に受任した事件を起訴後も引き続き受任するときは1の着手金を受けることができる。ただし,事案簡明な事件については,起訴前の事件の着手金の2分の1とする。
同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは着手金及び報酬金を減額することができる。
追加して受任する事件が同種であることにより,追加件数の割合に比して一件あたりの執務量が軽減されるときは着手金及び報酬金を減額することができる。
検察官上訴の取下げ又は免訴,公訴棄却,刑の免除,破棄差戻若しくは破棄移送の言渡しがあったときの報酬金は,費やした時間・執務量を考慮したうえで,1による。
⑤ 家庭裁判所送致前の受任か否か,非行事実の争いの有無,少年の環境整理に要する手数の繁簡,身柄付の観護措置の有無,試験観察の有無等を考慮し,事件の重大性等により,増減額することができる。
同一弁護士が引き続き抗告審等を受任するときは着手金及び報酬金を減額することができる。
追加して受任する事件が同種であることにより,追加件数の割合に比して一件あたりの執務量が軽減されるときは着手金及び報酬金を減額することができる。
逆送致事件は,刑事事件の1及び2による。ただし,同一弁護士が受任する場合の着手金は,送致前の執務量を考慮して,受領済みの少年事件の着手金の範囲内で減額できる。
⑥ 半日(往復2時間を超え4時間まで)
一日(往復4時間を超える場合)
弁護士報酬額欄の※印
※1 この範囲内で,各弁護士会が「定額」を定めます。お近くの弁護士会でお問い合わせ下さい。
※2 この範囲内で,各弁護士会が「標準となる額」を定めます。お近くの弁護士会でお問い合わ
せ下さい。
※3 事件の内容により,30%の範囲内で増減額することができる。
※4 この範囲内で,各弁護士会が「最低額」を定めます。お近くの弁護士会でお問い合わせ下さい。
(注)
1 各弁護士会は,初回市民法律相談料の「定額」や離婚訴訟事件の「標準となる額」に限らず,他の規定についても,この報酬等基準規定を基準とし,その所在地域における経済事情その他地域の特性を考慮して弁護士の報酬に関する標準を示す規定を定める。
2 依頼者との協議により,上の表によらず,弁護士報酬の額を1時間ごとに1万円以上の時間制(日当を含み,実費を含まない)にすることができる。
3 弁護士報酬の支払時期
- イ 着手金 事件又は法律事務(以下「事件等」という)の依頼を受けたとき
- ロ 報酬金 事件等の処理が終了したとき
- ハ その他の弁護士報酬 この規定に特に定めのあるときはそれに従い,定めがないときは依頼者との協議により定められたとき
4
- イ 弁護士報酬は1件ごとに定めるものとし,裁判上の事件は審級ごとに,定めるものとし,裁判外の事件等は当初依頼を受けた事務の範囲をもって1件とする。裁判外の事件等が裁判上の事件に移行したときは別件とする。
- ロ 同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときの報酬金は,特に定めのない限り,最終審の報酬のみを受ける。
5
- イ 弁護士は各依頼者に対し,弁護士報酬を請求することができる。
- ロ 紛争の実態が共通な複数の事件を受任するとき若しくは複数の依頼者から委任事務処理の一部を共通とする同種事件を受任するときは,弁護士報酬を減額することができる。
- ハ 一件の事件等を複数の弁護士が受任したときは,各弁護士は,各弁護士による受任が依頼者の意思に基づくとき若しくは複数の弁護士によらなければ依頼の目的を達することが困難であり,かつその事情を依頼者が認めたときには,それぞれの弁護士報酬を依頼することができる。
6
- イ 弁護士は依頼者に,あらかじめ弁護士報酬等について十分説明しなければならない。
- ロ 弁護士は,委任契約書が作成されている場合を除き,依頼者から申し出があるときは,弁護士報酬の額,その計算方法及び支払時期に関する事項を記載した報酬説明書を交付
しなければならない。
7 依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別な事情にあるときは,弁護士報酬の支払時期を変更し又は減額若しくは免除できる。
8 事件等が特に重大若しくは複雑なとき,審理若しくは処理が著しく長期にわたるとき,又は受任後同様の事情が生じたときは,弁護士報酬を増額することができる。
9 着手金及び報酬金を受ける事件等につき,依頼の目的を達することについての見通し又は依頼者の経済的事情その他の事由により,着手金を規定どおり受けることが相当でないときは,着手金を増額して,報酬金を増額することができる。
ただし,この場合において,着手金及び報酬金の合計額は,民亊事件1件により許容される着手金と報酬金の合算額を超えてはならない。
10
- イ 事件等の処理が,解任,辞任又は委任事務の継続不能により,中途で終了したときは,依頼者と協議のうえ,委任事務処理の程度に応じて,精算する。
- ロ イにおいて,弁護士のみに重大な責任があるときは,弁護士は受領済の弁護士報酬の全部を返還しなければならない。ただし,既に委任事務の重要な部分の処理を終了しているときは,依頼者と協議のうえ,全部又は一部を返還しないことができる。
- ハ イにおいて,弁護士に責任がないにもかかわらず,依頼者が弁護士の同意なく委任事務を終了させたとき,依頼者が故意又は重大な過失により委任事務処理を不能にしたとき,その他依頼者に重大な責任があるときは,弁護士は弁護士報酬の全部を請求することができる。ただし,弁護士が委任事務の重要な部分の処理を終了していないときは,その部分については請求することができない。
11 依頼者が着手金,手数料又は委任事務処理に要する実費等の支払を遅滞したときは,あらかじめ依頼者に通知し,事件等に着手せず又はその処理を中止することができる。
12 依頼者が弁護士報酬又は立替実費等を支払わないときは,依頼者に対する金銭債務と相殺し又は事件等に関して保管中の書類その他のものを依頼者に引き渡さないでおくことができる。この場合には,弁護士はすみやかに依頼者にその旨を通知しなければならない。
13 この規定に定める基準は,消費者法(昭和63年法108)に基づき弁護士の役務に対して課せられる消費税の額に相当する金額を含まない。
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準 |